タイヤの違い
ラジコンカー用のタイヤは素材と形状でグリップ力を調整し、走行する路面や状況に合わせて様々なものがあります。基本的にホイールに合ったサイズであればどのカテゴリーのタイヤでも装着可能ですが、タイヤは走行性能を決める最も重要なアイテムとなりますので、路面状況やシャーシの特性を見極めて選択する必要があります。
また、RCカー専用サーキットでは”指定タイヤ(コントロールタイヤ)”と言って走行に使用できるタイヤを限定していることもあります。これは路面のグリップを安定させるとともに、サーキットユーザーがタイヤ選びに悩まなくて済むというメリットもあります。コントロールタイヤ方式が採用されたレースでは参加者がすべて同じタイヤを使用し、イコールコンディションになることで走行スピードが拮抗。条件を揃えた公平な競技として好まれています。
●オンロード用タイヤ
最もポピュラーなツーリングカーやフォーミュラカーは、ゴム製のタイヤを使用します。タイヤに使われているゴムはその硬さや成分(コンパウンド)でグリップ力が変わりますので、実車のレーシングカーなどと同じように、状況に合わせてコンパウンドをチョイスします。実車と同じような中空タイプの形状ですが、実車のように空気を入れて圧を調整することはできないため、空気の代わりにスポンジインナーやフォームインナーと呼ばれるものを挿入し、グリップ力やクッション性を調整します。
また、多くのオンロード用ゴムタイヤは、タイヤが高速回転した際に遠心力で膨れてしまうのを防ぐため、伸びを抑えるインナーメッシュというものがトレッド面の内側に一体成型してあり、タイヤ形状を安定させることでグリップ力や走行安定性を高めています。
他にも12分の1レーシングカーというジャンルでは、ゴム質の多いスポンジシートをドーナツ状にくりぬいた”スポンジタイヤ”と呼ばれているものを使用します。こちらも素材の硬さや成分などでグリップ力が変わりますが、さらにグリップ力を高めるためにグリップ剤(トラクション材)というものをトレッド面に塗布し、ハイスピードで走れるように工夫される場合もあります。ゴムタイヤに比べると重量が軽く、条件が良ければ素晴らしいグリップ力を発揮します。
●オフロード用タイヤ
オフロードカーは走行目的によってマシンが様々で、それぞれに合わせてタイヤが開発され、種類も多くなっています。オンロード同様にゴムの素材でグリップ感が変わるのはもちろん、ブロックタイヤやスパイクタイヤ、レーシングバギー用のタイヤなど、形状や大きさもバリエーションに富んでいます。
ヨコモが販売するレーシングバギーの場合は、各地で開催されているレースの規定に合わせ、統一されたサイズのタイヤ/ホイールが使われています。たくさんのタイヤメーカーなどが同じ規格でタイヤを製造していますので、トレッドパターンやスパイクピンの長さなど、グリップ力や走行特性も千差万別で、路面に合ったタイヤを選択することも速く走るコツのひとつです。オンロード用のゴムタイヤと同じくインナースポンジやインナーフォームが使用されることも多く、インナーの種類や形状でグリップ力を微調整して走行します。
●ドリフト用タイヤ
ラジコンでのドリフト走行が始まったころは、ツーリングカーと同じようにゴムタイヤを使用してドリフトをしていました。しかしタイヤのグリップ力が高く、スライドさせるにはスピードやパワーが必要で、あまりリアルなイメージで走行できなかったため、ユーザーの間で流行したのが水道管に使われていた塩化ビニール管を輪切りにしたタイヤでした。タイヤとしては非常に硬くグリップ力が大幅に下がったため、適度なスピードできれいなドリフトが出来るようになりましたが、塩ビ管の削れた粉や見た目、走行中のカラカラといった音の問題などもありました。
そこでヨコモではオリジナルのドリフト専用タイヤを開発、ゴムタイヤをベースとして、トレッド面に樹脂製のリングを装着した”ゼロワン”タイヤを発売しました。タイヤグリップが下がったことで走行スピードが最適化、ゴムのベースで走行音も静かになるなど、これまで課題となっていた様々な要素を改善し、ドリフトパッケージの標準タイヤとしても採用されて、現在のラジコンドリフトブームを築き上げた立役者となりました。その後さまざまな改良もおこなわれ、タイヤ全体が樹脂でできたものも登場するなど、タイヤの形状やコンパウンドのバリエーションも増えました。
樹脂製タイヤとはいえコンパウンドもいろいろあり、素材の違いなどでグリップ力が変わります。ただし一般的なドリフト用サーキットでは1~2種類のタイヤのみ使用可能など限定しているところも多くなっています。これは走行するマシンのスピードをある程度均一にし、追走や団体ドリフトを楽しみやすくするのも大きな目的のひとつです。